高齢者をみつめて
老母は最近まで、ひとりで
バスに乗って徒歩で通院できていたのに
私が車で送迎するようになると
歩くのも覚束なくなった。
筋力も気力も衰え出したら早い。
はじめは病院前で降ろし
診察後に迎えに行っていたが
今は病院内まで付き添って
先生の話を聞き取り
母の耳元で説明を伝えて
会計まで。
荷物を持ったり服を着せてもらったり
世話をしてもらって母は満足げだ。
待合室でぼうっとしている。
こうやって衰えていくのだな。
坂道を転がり落ちるように
何もかもできなくなっていくのか。
暗澹たる思いが湧き上がる。
私が付き添うようになって
看護師たちはホッとしている様子。
病院はいそがしい。
耳が聞こえにくくて
ヨボヨボとしか歩けない老人の世話は
付き添い人にまかせたい。しかし
老人の相手は厄介だが
まめに通院してもらいたいようだ。
電気治療に通う老人には愛想がいい。
老母はあらたに膝痛がでた。
レントゲンを撮ると
膝頭の一部分が欠損していた。
骨粗鬆症があちこちに出現しはじめたのか。
医師はレントゲンを指し示しながら
根本的な治療は手術になる という。
高齢だから無理 という。
ヒアルロン注射をします と。
看護師が張り切って別の部屋に案内。
ベッドに寝かせると私は追い払われた。
注射が終わると手招きされて
老母を迎えに駆け寄る。
脇腹に加えて膝の注射に
2週間ごとに通うことになった。
ヒアルロン注射は気休め。
一時はよくても
繰り返すうちに効きにくくなるらしい。
ローション状の痛み止めで我慢するしかない。
逆流性食道炎もたびたび起こるようになり
家の中の移動も時間がかかるようになった。
だんだんと状態が悪くなっていく母・・・
ただ、見守るしかない。

