保険は助けてくれなかった

口座が凍結されたため
引き落としができないと保険会社から通知があり
本人が亡くなったことを伝えると
外交員が家に来た。

ダンが掛けていたがん保険・・・
死亡原因はがんではなかったため
保険金は降りなかった。

ダンは私も含めて夫婦で加入していたらしい。
もう20年以上の前のこと。
知らなかった。
それくらい呑気な私。

外交員は執拗に継続を進めてきた。
がんだけに特化した保険・・・
ダンは別の病に倒れた。
私はどうだろうか。
将来、がんになるのだろうか。

ダンは何を考えて
この保険に入っていたのだろう。
名刺をよく見たら、
勤めていた会社の系列だった。
そうか。
仕事の付き合いで入ったのかもしれない。




どうしよう。

考えても私にはわからない。
こういったことはすべてダンが仕切っていた。
何が良くて何が無駄で
的確に判断していつも最善の方法をとっていた。
いつも持論を語っていたダン・・・

ダンだったらどうするんだろう。


わかっていることは
この保険が助けにならなかった 
ということだけ。
だからきっと私の助けにもならないだろう。
毎月、それなりの保険金を払い続けても
がんにならなければ意味がない。
掛け捨てだから死亡後の払戻金もない。

どうしよう。
考えられないよ、
私には決められないよ、ダン!



結局、押し切られて
再契約することになった。
担当者は声を弾ませ、嬉しそうに
生き生きとして手続きをすすめた。

ダンが亡くなったから
こういうことになっていることを忘れている。
少しぐらい、気遣いがあってもいいのに。
ビジネス優先・・・


外交員が帰った後、
いきなり寂しくなって
とても気分が沈んでしまった。


今、がんになりたい。
ステージ4の余命半年、
どんどん悪くなって
ダンのいなくなった日までに
この世から消えてしまいたい。




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