旅行は最悪だった
今年はどうしたんだろう。
みんな喪に服しているのかと思うくらい
暗くて寒くて鬱陶しい毎日。
雨もよく降る。
晴れた日は花粉が飛ぶ。
いよいよ気が滅入ってきたので
思い切って南の島に出かけた。
青い海、明るい空、
誰も知った人がいないところで
こころを洗いたい・・・
結果は最悪。
飛行機は天候悪化のため
着陸できずに旋回を繰り返し
離発着に遅延が出た空港は
通勤ラッシュ並みの混雑ぶり。
座る席もない。
なんとか乗り継いで着いた島も
ただ湿気が多いだけのどんより天気。
期待していた風景がなかった。
これはわたしのせいなのか。
私が雨を連れてきたのか。
ダンは晴れ男だった。
さっきまで土砂降りだったのに、
出かける頃にはぴたりと雨は止む。
大切な行事のときはいつも晴れ。
外仕事でも、
作業を終えるまで
自宅倉庫に機械を入れてから
雨が降り出すことが多かった。
ダンといたときはいつも晴れていた。
ダンがおおきな傘になっていたのだ。
到着日だけ薄曇り。
ホテルの周囲には何もなくて
野道を20分かけて町まで歩いた。
シーズン前だからか
ほとんどの店が閉まっていた。
商店街に人影が無い。
まるで廃墟。
何も無い・・・
エメラルドグリーンの海
南の島の青空と爽やかな風
満天の星
期待していたものが何も無かった。
ただ、どんよりとした風景が広がっていた。
こんなはずではなかった。
ダンがいたらこんなことはなかった。
いつもうまく行っていたのに・・・
翌日から雨。
そして南国らしからぬ気温の低下。
ホテルの人が
この時期にヒートテックを着るなんて
と驚いていた。
彼女はダウンベストを着ていた。
せっかく遠くまで出かけたのに
雨に会いに行ったみたいだった。
帰り際まで横殴りの雨は続いた。

