命をわかちあえたらよかった
ダンは健康には気をつけていて
いつも私より先に検診に行っていた。
そして、大腸がん検診用のキットを
もらってきてくれた。
オマエも早くいけよ と。
ぐずぐずしている間に
2月末までの期限が迫ってきた。
病院に行くのは久しぶり
看護婦さんが
落ち着かれましたか
いえ、なかなか・・・
消え入りそうな声しか出なかった。
みなダンが亡くなったことを知っている。
いたわりの目で私を見つめている
あたたかいけれど
これが切ない。
先生もやさしく
検査結果を熱弁してくれた。
心電図も、尿検査も、骨密度も
どこも悪くないと褒めるように言ってくれた。
昨年のコレステロール値をみながら
長生きできるよ と。
長生き
しても何になりましょう
この寿命を半分、ダンにあげたかった
つい涙がこぼれてしまった。
先生はわるくないのに。
私だけ健康で長生きしてもしかたがない
これからずっと寂しさを味わい続けるだけ
こころが病んでしまいそう
ダンの病気を半分こできたらよかった
同じ苦しみをわかちあえればよかった
そしてふたりで
寿命をまっとうして
同時に死ねたらよかった。

