「おめでとう」と言われて

ダンがいなくなって

正月が消えた。

新年になったぐらいでなにがめでたい。

ダンがいないのに何を祝う。

やさぐれた気持ちで

なるべく出歩かず人と会わず

家に引きこもって半月が過ぎた。




月例のバイトはそれぞれが単独で動くため

仲間同士が会うことはないが

昨日はある店舗で同僚と出くわした。

彼女は確信犯。

以前から、仕事先で私に会うことを楽しみにしている。

ニアミスする時間にはまず店舗内に私がいないか

さがしているようだ。

10月に仕事を休んだ時

心配してラインをくれたのも彼女。


あけましておめでとうございます

今年もよろしくお願いします


会うなり明るく挨拶してきた。

そうだ。新年はみなそう言うものだ。

1月も半月を過ぎていたから油断していた。


彼女に悪気はない。

ダンが亡くなったことを言っていない。

上司以外、他の同僚にも言っていない。

別の仕事仲間にも言っていない。

同情されたら気がゆるんで

会うたびに泣く羽目になるから。



おめでとう をはしょって

こちらこそよろしくお願いします と返した。

そして

寒いねー と話題を変えた。

からっと話せる自分におどろく。


何事もなかったかのように振る舞う私。

お互いに仕事中だからすぐに別れたが

ほんの数分の会話にこころがふるえた。

通路を曲がると

抑えていた涙が込み上げてくる。


強がっている。

ふんばっている。




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