道に迷う
準確定申告に必要な書類を、
会計事務所に届けに行った。
時短しようと一区間だけ高速に乗ったら
下り口を通り過ぎてしまった。
結局、他県まで行って折り返したが
昼になってしまったため
電話して予約の時間を変更してもらった。
はーなーもー
何やってんだ!
ダンがいたら笑い飛ばしてくれるだろうか。
どこかに出かけても
自信たっぷりに違う方向へ歩く。
そんな方向音痴の私に呆れていたダン。
いつも私の先を歩いていたダン。
私、どうしよう。
これからの人生に迷っている。
昨日、親戚から電話があった。
喪中ハガキを見て香典を送ってくれたひと。
息子の手紙を添えて返送していた。
供えてくださったらよかったのに と仰ったが
香典はどなたからもいただいていないんです と。
その方はいろいろと聞きたそうにしていたが
寂しくなりましたね の一言で
一気に涙が溢れた。
言葉にならない。
そうなんです。寂しくて
もうどうしていいかわからなくて
どうやっていけばいいのかわからなくて
まいにちくるしいんです と
絞り出すように言うと
お母さんはお元気ですか だいじにしてあげてね
私も歳だから気になります と。
はい・・・
消え入りそうな声で返事をした。
母を大事にできない
私のこころを見透かされているようだった。
このところ母の圧を感じる。
おまえだけが頼り
おまえがいなくなると困る
呪文のように繰り返されると
わかっていても気持ちが萎えてしまう。
昨日も些細なことで喧嘩になった。
そんな自分が嫌になる。
稲刈りが終わるといつもどこかへ出かけていた。
昨年はダンは友達と東北へ
私はそれに合わせて瀬戸内へひとり旅に出た。
帰ってからそれぞれの旅行の話をした。
ダンは友人とのはちゃめちゃな道中を
面白おかしく喋った。
私は日光より北に行ったことがない。ダンは
いつか東北の温泉巡りをしよう と言っていた。
どこかに行きたい。
ここにいたくない。
息が詰まりそうだ。
気がついたら旅先を検索していた。
温泉がいいか。
それとも南の島でのんびりするか。
ねえ。どっちにする?
聞いても返事はない。
これからずっとこうなのか。
ずっと独り言なのか。
道に迷ってもひとりぼっち。
ほんとうはダンのいるところに行きたい。
会って話がしたい。
迷わずにダンのもとへ行けるか
自信がないけれど。

