未亡人は指輪を外すのか
ダンの手帳を探していて見つけた。
ダンの結婚指輪。
結婚後、数年でダンが太ってしまって
外されたままになっていた。
そういう私も
数年前の大腸がん内視鏡検査のときに
消防署で切ってもらっていた。
検査の麻酔で容体が悪化した時に
外せないとこまるから。
だから2人ともに指輪はしていなかった。
べつに指輪がなくても夫婦だった。
本棚からでてきたダンの指輪をはめてみた。
ちょっとゆるいが抜けることはない。
私の指も太っていた。
そして、ゴツゴツでシワシワで老婆のようだ。
農作業によるへバーデン結節の症状がでてきている。
手入れをしていない年齢相応の手だ。
情けなくてまた泣いた。
夫を亡くした妻は
指輪を外すものなのだろうか。
そっと箱に戻した。
なくさないように目立つ場所にしまった。
私は普段はアクセサリーをつけない。
でもこれからはときどき
ダンの指輪をはめてみよう。
勇気のいる場に行く時に
ダンに一緒についてきてもらいたい。


