まだ2ヶ月なのに
帰郷した息子のタロウを連れて親戚宅に行った。
相続手続きのアドバイスをもらうため。
おおよその手順はわかったものの
こちらとは事情も条件も違うから
参考程度にとどまった。
やはり私たちで考えなければならない。
農業をどうするかがネックだ。
タロウは稲作の経験がない。
田植えをしたあとは
畦(田んぼの周囲)の草刈りをするぐらいで
稲刈りまで何もしなくていいと考えていた。
話を聞く上で、稲作についての問題が
いろいろ浮上してきて困った。
親戚は サポートをするよ と言ってくれたが
そう甘えてもいられない。
心配していたダンの話題は少ししか出なかった。
なんだかそっけなく感じた。
ダンのことはもう過去のことになっていた。
もう、皆は前を向いている。
まだ2ヶ月と少ししか経っていないのに。
帰宅して、畑を借りてくれている人に
今年の賃料の領収書を持って挨拶に行った。
いつもは長話になるのに、
寒くなったね 気をつけてね と。
さっぱりしたものだった。
もうダンのことは忘れはじめているのか。
ダンがいなくなって2ヶ月がすぎた。
空が落ちてきたようだったのに
それは私だけ。
世界はなにもかわらずに続いている。
遠くの国の紛争のように
その時は気の毒だな、大変だなと感じても
テレビのスイッチを切って
家族で団欒・・・
いや、今までの私も同じだった。
大切な人を亡くして悲しみのどん底にいるひとは
世界中にたくさんいるのに
その人たちのこころを考えてもみなかった。
こんなに悲しくて苦しくて辛いことだったのに
まったく深く考えていなかった。
寄り添いもしなかった。
冷たくて情けのない私だった。
これは天罰だ。
私がしてきたように
世間のひとは私の悲しみなど理解しないし
わかるわけがない。
そのくせ
どこかで慰めてもらいたがっている自分がいる。
このままではダメなことはわかっている。
私がしっかりしなければいけない。
でも・・・どうすることもできずに
沼に沈んでしまう。

