悲しみの上書き
納骨の2日後に
義姉が電話をくれた。

どうしているのか気になって と。
もっと早くに電話しようと思っていたのに
遅くなってごめんね と。
ダンも私も義姉が苦手だった。
ぺらぺらと言葉数が多く
中身のないおしゃべりが長い。
相談すると見せかけて
人の話は聞いていない。
容易にこちらの話に同調したり
今までの話を覆したり・・・
何かどこにも芯がないような
いいかげんに話をする人だった。
義姉の話を聞くのは疲れると
ダンは言っていた。
私もそう思っていた。
でも、今は違う。
義姉は相変わらずぺらぺらと話す。
澱みのない言葉の羅列・・・
気遣いと労りの言葉が
岩肌を流れる水のように私に注がれる。
なんなのだろう、この人。
どうしてそんなに
私に優しくしてくれるんだろう。
この人のお喋りを
私は初めて心地よいと感じた。
義姉とダンの話をした。
私はダンに対してできなかった事が多い。
たらればの話ばかり。
義姉は後悔に泣く私を慰め、
時に否定して
私を励まそうとしてくれる。
電話口でおいおいと泣いてしまった。
忘れかけていたダンへの思慕が
津波のようにふくれあがり
できたばかりの堤防を突き崩した。
そうして結果的に
また悲しみのどん底に落ちてしまった。
嫌な気持ちがしないのは
ダンを失った悲しみに
私はまだ
ひたっていたいからだろう。
